乳幼児期の睡眠不足で子どもの脳と体が危ない!

2014.04.30

  • くらし
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古くから日本では、「寝る子は育つ」と言われていますが、みなさん、その理由をご存知ですか?「ちょっとくらい遅く寝ても……」と、ついおざなりにしがちな睡眠ですが、実は食生活と同じくらい、子どもの成長と深い関係があるのです。乳幼児期の睡眠の質が後々、学習能力の低下や肥満にもつながる!?睡眠改善シニアインストラクターとして活躍されている一児のお母さん、内海裕子さんにお話をうかがいました。

なぜ、「眠る」ことは大事?

脳の疲れは「眠る」ことでしか取れない

「日々の体の疲れは、マッサージをしたり、リラクシングチェアに座ったりすることで基本的には回復しますが、脳の疲れは眠ることでしか取り除けません。これは、子どもも大人も同じで、起きている時間は脳に疲労物質がどんどん蓄積されていきます。その溜まった疲労を睡眠によって回復するというサイクルを、私たちは毎日繰り返しています」

睡眠が不足すると……

「睡眠が不足すると、脳の疲れが取れません。すると、脳機能の回復ができず記憶力が低下するほか、情緒も不安定になりやすい。また、免疫力が低下し、風邪を引きやすくなるなど、健康面にも影響します。たとえば新生児の時期は、授乳やおむつ替えの回数が多くて、お母さんは睡眠不足になりがち。すると、いつもだったら平気なことにもイラッとしたり、旦那さんのちょっとした発言に腹が立ったりしますよね。それは、ホルモンバランスの影響もありますが、睡眠が圧倒的に不足しているということも原因の一つなのです」

「寝る子は育つ」は、本当です!

大人以上に子どもは睡眠が欠かせない

「子どもは今まさに発達段階にあるので、睡眠が不足すると体にも心にも、脳機能の発達にも大きく影響が出てしまいます。眠りは毎日のことなので、おざなりにしがちですが、体だけでなく、脳機能の発達に大きな影響があるということを是非みなさんに知っていただきたいですね」

10歳頃までが勝負

「親が子どもの生活に深く関わってあげられるのは、本当に短い期間だけです。大体10歳ぐらいまでの間に、ベースとなる“眠る力”“生活習慣力”を養ってあげられるかどうか。それによって、その後の人生が変わってくるかもしれません。たとえば、睡眠不足では学んだこともしっかりと記憶しにくくなってしまいます。ぐっすり眠って、スッキリ目覚め、高い集中力で先生の話を聞き、熟考し、学ぶことができる状態を作ってあげないと、どんなに素晴らしい先生から学んでも、良い教材に触れても、遅くまで塾に行っても意味がない。吸収力の高い“スポンジ”のような状態で日中を過ごすことができないと、学んだものも流れていってしまいます。だから就学前までにきちんと生活習慣を整えて、お子さまの能力をぐんと高めてあげて欲しいです」

日本の深刻な睡眠事情

世界で2番目に睡眠時間が短い日本

「OECD(経済協力開発機構2009年)のデータによると、日本は世界で2番目に睡眠時間が短い国だという調査結果が出ています。これは、大人も子ども(15歳以上)も含めたデータです。ちなみにワーストワンは韓国で、日本との差はわずか1分。ほとんど変わりません。韓国と日本は、儒教の影響もあるのでしょうか。頑張れば頑張るほどより成果をあげられるというマインドを持ちがちな社会性もあり、仕事も勉強も不眠不休になりがちですね。また、日本の中で男女の睡眠時間を比較すると、より寝ていないのは女性。日本人女性は、世界一睡眠時間が短いと言われています。育児も仕事もこなして、旦那さんの面倒も見て、介護までやって、お母さんたちは本当にがんばっていますよね。そして、男女の家事時間に関するデータを見ると、日本人男性の家事時間は世界各国の男性と比べて、圧倒的に低いという結果も出ています。世のお父さんたち、この現実を受け止めてもっとお母さんたちを寝かしてあげてくださいね」

子どもの遅寝は、親が原因

「こういった親の睡眠事情に子どもも引きずられて、どんどん寝る時間が遅くなっています。右のグラフにあるように、0〜3歳までの子どもの寝る時間を各国で調査したところ、日本は22時以降に寝る子どもが約半数もいるんです(A)。また、両親と子どもの睡眠の関係を調査した、興味深い結果もあります(B)。これを見てもわかるように、両親ともに意識を改革していかないと、なかなか子どもの睡眠の問題を改善することはできません」

乳幼児期の睡眠不足が招く問題

22時以降の就寝には、要注意!

「先ほどのグラフにもあったように、22時以降に就寝する子ども、いわゆる“夜行性ベビー”が増え続けています。寝る時間が遅いと、どうしても起きる時間が遅くなり、睡眠時間も短くなります、それが、脳の発達に悪影響を及ぼし、以下のような問題を招くと言われています」

  • 1.指差しや喃語が少ない
  • 2.情緒が不安定になる
  • 3.多動など、精神の症状が出てくる
  • 4.5歳時点で三角形が書けない
  • 5.小学校4年生で夜型に
  • 6.さらに中学生で肥満

学習能力の低下や肥満にもつながる

「上に書かれた項目をご覧になって、『睡眠不足でそんなことに?』と思われた方もきっと多いかと思います。最近は、授業中に歩き回る子どもが増えていますが、実はこれも睡眠不足が原因のひとつだと言われています。本来であれば、『今は座っていなければいけない』という教室の空気をよんで着席すべきところ、睡眠不足で脳の機能が回復していないがために、自分自身を客観的に見る視点が失われたり、情緒不安定になったりして、歩き回る、大声で叫ぶといった行動に出てしまうのではないかと言われています。また、福岡の小学校で睡眠と学力の関係を調査したところ、22時以降に寝ている子どもの中に学力上位群はいなかったという結果が実際に出ています。このような調査結果からもわかるように、睡眠と日中の生活は表裏一体なんです。お父さん、お母さんも毎日忙しくて大変ですけれど、子どもにとって睡眠は本当に大事なことなので、ぜひがんばってもらいたいですね」

シリーズ「子どもの睡眠」、第1回はいかがでしたか?乳幼児期の睡眠がこれほど大事だったとは……!今回の取材は、本当に驚きの連続でした。次回は、子どもが夜ぐっすり眠れる環境づくりや生活習慣など、実践編をお届けします。

文:孫 奈美(主に児童書やライフスタイル関連の記事を編集・執筆。2歳になる一女の母)