早期教育なしでも優秀な子は育つ!

2014.07.09

  • くらし
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1986年、千葉県松戸市に開設された「母と子のオムニパーク」は、今や“伝説の幼児教室”と呼ばれています。現在日本には、いわゆるお受験教室が数多く存在しますが、「母と子のオムニパーク」はそれらとは一線を画しています。ペーパーテストのような受験対策をしないカリキュラムでありながら、毎年、有名校への合格者を多数輩出。室長を務めるのは、元幼稚園教諭の福岡潤子先生です。「幼児期に大切なのは早期教育よりも、コミュニケーション力を身につけることです」。その言葉の通り、同校では親子のコミュニケーションスキルを高めることで学習する姿勢や心を育て、結果として受験時に大きな力となっています。福岡先生が長年伝えてきた、親子のコミュニケーションの大切さについてうかがいました。

出産は本能、子育ては学習

最も身近な生き方のお手本は、お母さん

「幼児期の子どもは『人的環境』に影響されて、さまざまなことを学んでいきます。建物や設備、遊具といった物的環境に対して、人的環境は人を意味します。子どもに最も影響力のある人的環境は、言うまでもなくお母さん。お母さんの言葉かけや行動が、そのまま子どもに影響するのです。『出産は本能、子育ては学習』だと私は日々申し上げていますが、子育てのスキルを身につけて、ぜひ、お母さん方に“プロの母親”になっていただきたい。今回は、そんな幼児期に大切なコミュニケーションスキルについてお話します」

知識を蓄えることよりも、まず大事なこと

「子どもはお母さんの言葉かけや、コミュニケーションを通じて学んだことを土台にし、友達と接したり人間関係を広げていったりします。学校生活においても社会に出ても、人とのコミュニケーションは欠かせませんよね。私が主宰する『オムニパーク』では、他の幼児教室と違って受験のためのペーパーテストはほとんど行いません。それよりも、将来にわたって自ら道を切り拓くことができる(生きる)力、自分を表現する力、周りの人と関わる力をもった子どもを育てることを大事にしています。その結果の一つとして、名門小学校への合格があります。実際にオムニパークの卒業生たちの多くが、名門小中学校、そして高校、大学に合格しています。生きる力、自分を表現する力、人と関わる力。それらの基本となるコミュニケーション力は、親子のやりとりのなかで培われるという意識を常に持つことが大事なのです」

「ダメ」は禁句。子どもの意思を尊重する

個を尊重してあげることで、優しさが育つ

「子どもと接するときにまず大事なのは、たとえ乳幼児であっても一人の人間として尊重すること。『Aちゃん、これで遊びたいの?』『●●してみようか?』『どうする?』と、子どもの意思を確認してください。そうすると、お友達と遊ぶときも、『遊ぼうよ!』と自分の思っていることを相手にぶつけるだけでなく、『一緒に遊ぶ?』など、まず相手の気持ちがどうなのかを聞いてあげられるようになります。つまり、優しい子に育つのです。そういう子は将来、人に何かを言われたとしても、すぐにカッとなったり、落ち込んだりせずに、『この人は、立場上こういう言動をしているのか』『この人は過去の出来事によってこういう言動になっているのだろう』と、人を理解できる、認められる大人へと成長します」

「指示・禁止・命令・制止」はNG

「個を尊重するというコミュニケーションと対極にあるのが、『指示・禁止・命令・制止』。『Aちゃん、これ持って』『●●しちゃダメ』『●●しなさい』『待って!』といった言葉は、つい言いがちですよね。ダメという言葉は万能で、その一言で事が済んでしまいますが、そういったコミュニケーションの中で育った子は、友だちにも『ダメ』とすぐ言ってしまいます。また、『Aちゃん、そんなことしてよかったの?』と聞いても、『ダメ』の一言。『どうしてダメなの?』と聞いても、『ダメなの』で終わってしまう。何がどうダメだったのかわからないと、いつまでたっても同じことを繰り返しますし、成長しません。また、禁止・命令するような言葉かけばかりしていると、子どもはだんだんと、『お母さんは自分が言ったことをきちんと聞いてくれない、受け止めてくれない』と思うようになります。すると、ますます言うこと聞かなくなり、お母さんは怒ってばかりというスパイラルに陥ります」

会話の基本は、「的に目掛けてボールを投げる」

母子ともにスキルアップを図ろう

「コミュニケーションは、キャッチボールのようなもの。見当違いのところにボールを投げていては、やりとりが成立しません。子どもは、大人に比べてまだボールを受ける的が小さいし、キャッチするスキルも高くありません。その小さい的に向かって、お母さんは一所懸命ボールを投げるけれど、子どもの頭の上を通り越したり、投げたボールが強すぎて子どもが受け止められなかったりします。つまり、子どもにわかるような言葉を使えていないのです。子どもはまだ小さい、お母さんも母親歴が浅いとなると、キャッチボールのスキルがともに不足しがち。ゆえに、コミュニケーションがうまくいかないということが起きるのです」

会話のキャッチボールを成功させるには?

「私は教室の子どもたちに話しをするとき、まず子どもと目線を合わせて、こう言います。

福岡先生:Aちゃん、今から先生お話するね。よそ見していると、お話がわからなくなっちゃうから、先生のお目目を見ていてね。(キャッチボールに例えると、子どもの手にボールを乗せてあげる)

Aちゃん:うん、わかった!

(((……話が終了))))

福岡先生:わー、ありがとう!先生とのお約束を守って、ちゃんとお話を聞いてくれたね。

……といった具合に、幼い子とでもキャッチボールが成立します。こちらが、子どもに『ありがとう』と言うことで子どもは、投げられたボールを受け取ってそれを人にちゃんと返すと、相手がこんなにも喜んでくれるということがわかり、もっと人とコミュニケーションをとりたいと思うようになります。また、そういった人との関わりを通じて自然と『ありがとう』が言える、つまり、感謝の気持ちというものが芽生えます。ただ、「ありがとうと言いなさい!」では意味がなく、親子のコミュニケーションの中でそういう気持ちを教えてあげることが大事なのです。子どもは小さければ小さいほど学習する力がありますから、『まだ小さいから言っても分からないだろう』ではないのです。もし伝わっていないのだとしたら、親のボールの投げ方に問題があるはずです。子どもは、驚くほどどんどん変わっていきますから」

次回は、小学校入学前までに身につけたい力について、引き続き福岡潤子先生にうかがいます。お楽しみに!

文:孫 奈美