“効く叱り方”を知って、正しいしつけを!

2014.07.23

  • くらし
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子どもと意思疎通が図れる時期にさしかかると、悩むのがしつけの問題ですよね。「どう叱ったらいいのわからない」「何度言っても聞いてくれない!」……。そんなお母さんたちの尽きない悩みに答えてくださるのは、前回に引き続き、幼児教室「母と子のオムニパーク」を主宰する福岡潤子先生。「友だちをたたいてしまったとき」など、ケーススタディを交えて「叱る」ということについてうかがいました。

叱る=概念・価値観を伝えること

この時期だからこそ、しつけを

前回、お話させていただいたように、『脳の発達の基礎は3歳までに、完成するのは7~8歳』と言われています。だから、この時期に学習する力を伸ばしてあげることが大切だとお伝えしましたが、もうひとつ大切なことがあります。それは、人としてやっていいことと悪いことを教えてあげること。この時期に身に付けた感覚が、子どもの人格や価値観を形成する上で土台になります。『まだ小さいから』ではなく、『この時期だからこそ』という意識をぜひ持っていただきたいですね」

物事の良し悪しが判断できる子に

「お母さん方は“叱る”と“怒る”を混同している場合が多々あります。叱るというのは、物事の概念や価値観を伝えること。それによって、子どもはやっていいことと悪いことを学習します。それに対して怒るという行為は、頭ごなしに『ダメでしょ』などと注意をするだけなので、教育的な効果がありません。だから、子どもは同じことを繰り返すのです。怒るべきかどうかを悩んでいるお母さん方も多いようですが、『叱る=概念・価値観を伝える』と理解していただければ、幼児期の教育には欠かせない行為だということがおわかりいただけるかと思います」

お母さんの価値観が子どもの価値観を作る

「“叱る”という行為には、お母さんの価値観が大きく反映されます。たとえば、『そんなことしたらお友だち、嫌がるんじゃない?』という言葉かけは、『そういうふうな人が嫌がることはやめましょう』というお母さんの価値観を伝えています。もしお母さんが、それくらいのことは友だちにしてもいいと思っていたら、『やめようね』とは言いませんよね。するとその子は、『こういうことはしていいんだ』と学習します。また、たとえお母さんが心の中では『やめようね』と思っていたとしても、それを口にしなかったら、子どもは『やっていいこと』という認識になってしまいます。最近は、いちいち注意をしないお母さんも増えていますが、面倒でも口にするようにしていきましょう。大人にとっては何でもないことであっても、子どもにとっては初めての経験という場合が多いので、その場その場で子どもは学習をしていきます。あまり良しとされないような行為を『このぐらい…』と家庭で肯定していると、幼稚園や学校の先生がいくら叱ったとしても、子どもの行動はなかなか改善されません」

【ケーススタディ1】
友だちに手を出してしまったとき

--- 1 ---
「お友だちのこと、どんってしちゃったね。Aちゃんのこのお手々がどんってしちゃったんだよね。どうしてどんってしちゃったの?」

まずは理由を聞いてみましょう。すると、「お友だちがおもちゃを取った」とか、「お友だちと仲良くしたくて少しふざけたら、たまたまどんってなっちゃった」とか、その子なりに理由を言うはずです。たとえ言葉で言えなかったとしても、こちらに表情で訴えかけてきます。この導入の会話により目線が合い、子どもが(会話の)キャッチボールを受け止める体勢になります(第一回参照)。

--- 2 ---
「そうか、このお手々がどんってしたくなっちゃったんだね。でも、ほらみてごらん。お友だち、泣いているよ(怒った顔してるよ)。どうしてだろうね。このお手々がどんってしちゃったからなんじゃないの?Aちゃん、お友だちをどんってしていいのかな?」

今起きていることや、してしまった行為について一緒に考えます。小さい子の場合、まだわからないので、「どんってしてもいい!」と答える場合が多いです。

--- 3 ---
「じゃあ先生(お母さん)も、どんってしていい?」(その子が多少よろけるぐらい押す)
……泣き出す……
「ほらー、びっくりしたでしょう。どんってされたら嫌だったよね。お友だちも、このお手々がどんってしたから泣いているんだよ。じゃあこのお手々に『もうしないでね』って言ってみようか」

その子自身を否定するのではなく、「この手がいけなかった」と伝え、もうしないことを自分自身で自分の手に約束させます。けれど、子どもなので何かの折にまた同じことをやります。でもやった後に自分の手をじーっと見るはず。その時に、「偉かったね、どんってしちゃいけないってわかったんだよね。だから、お手々を見ていたのね。このお手々に『どんってしないでね』っ言ってみようか」と念を押します。すると、次の段階ではもうやらなくなります。

★まとめ★

このやりとりによって子どもは、「人に危害を加えるようなことをやらない」ということを学習します。お母さん方の多くは、友だちに手を出す行為はダメだということしか伝えなかったり、「ごめんなさいは!」と怒って終わりにしたりしてしまいます。この会話の中で私は、「謝りなさい」と一言も言っていません。なぜなら、それでは「叱る=物事の概念・価値観を伝える」ことにはならないからです。

【ケーススタディ2】
椅子(テーブル)に立つなど危険行為をしたとき

--- 1 ---
「お椅子に乗ってるの?お椅子って何するもの?お椅子ってそうやってたっちするものだっけ?」
(子どもは自分が椅子の上に立っているので、「うん」と言うはず)
「そうかー、Aちゃんにとってお椅子はたっちするものなんだね。先生は、こうやっておしりをここに乗せて座ったりするものだと思う。でもAちゃんとっては、たっちするものなの?おんりしないの?」

一般的には、「降りなさい!」「危ないからそんなところに乗らないよ」などと言いますが、この段階では決して威圧的な言い方をせず、その子なりに考えさせます。つまり、椅子はどういう役割があるのかということを概念化しているのです。だから、無理やり降ろしたりしません。

--- 2 ---
「Aちゃんもお椅子持ってきたの?さっき、お椅子はたっちするものって言ったよね?どうぞ、たっちしてください」(おやつを食べるとか絵を描くという場面になり、子どもたちが机の周りに椅子を持って集まってくる)

そう言って、椅子の上に立たせちゃいます。そうするとみんなと一緒に絵を描きたくても描けないので、怒ったり泣いたり騒ぎ出します。

--- 3 ---
「お椅子はこうやってお机の所に持ってきて、字を書いたりおやつを食べたりするときに座るものでしょ?もうたっちしないですか?」

そこで目を見てしっかり言います。すると、「うん」という感じで納得します。もし、「危ないからやめよう」という概念を伝えるのであれば、危ないということがどういうことかをその子にまず知らせます。たとえば、子どもが椅子の上に立っているときに背もたれを持って、落ちない程度に少しだけ傾けたり、揺らしたりします(周りに危険なものがないかを確認した上で)。すると子どもはびっくりして、危ないということを理解します。いくら言葉で「危ないわよ」と言っても、実際には危ないということがわからないので、いつまでも立っているのです。

ついやりがちな“回避的な行動”に注意

ごまかしたり、うやむやにしない

「先ほど、叱るという行為についてケーススタディをご紹介しましたが、もうひとつ、小さい子に起きがちな事柄についてケーススタディをご紹介します。乳幼児期は、他のお友だちが持っているおもちゃなどをすぐに欲しがりますよね。そういうとき、お母さんたちはケンカを避けるためなどに、『あっちにも同じおもちゃがあるよ』と言って、回避的な行動を取りがちです。けれど、たとえまったく同じ種類のおもちゃであっても、Aちゃんは『Bちゃんが持っている』という付加価値がついた、そのおもちゃが欲しいのです」

おもちゃの取り合いも大切な学習の場

「ところがお母さんはそれをわかってないので、『Aちゃん、ほらここにBちゃんと同じおもちゃがあるよ』と言って、回避的な行動を取ってしまう。すると子どもは変に納得させられ、『わかってもらえない』という気持ちが残ってしまいます。そのような回避的な行動を取り続けると、『自分の気持ちを伝えても、どうせわかってもらえない』という感覚を持ったまま成長して、思っていることをはっきり言えない大人になってしまいます。おもちゃを巡ってけんかをするなど、この時期に心と心でぶつかるという経験はとても大切なこと。そうすることで相手を心から信頼することができ、本当の意味で人を許せる子になるのです。何でも回避しようとせずに、子どもたちに学習の場をたくさん与えてあげましょう」

【ケーススタディ3】
おもちゃの取り合いになった場合

お母さん

「Bちゃんが持っている、このおもちゃが良かったの?あそこにも同じおもちゃがあるけどどうする?」

Aちゃん

「ううん、嫌だ」

お母さん

「やっぱりBちゃんが持ってるこれが良かったんだね。じゃあ、『貸ーしーて』って言ってみようか」

……Bちゃんが貸すことを嫌がる……

お母さん

「きっとBちゃんは、まだこれで遊びたかったんだね。もうちょっと経ったら、『もう遊んだからいいよ』って言ってくれるかもしれないから、また後でもう一回言ってみる?それまでの間、こっちのほうでママと一緒に遊んで待ってようね」

★まとめ★

他の遊びに夢中になっている間に、Bちゃんのおもちゃのことを忘れてしまったら、それはそれでいいんです。借りられなかった場合も、「貸してくれないからあっちで遊ぼう」では回避的な行動になってしまうので、「後でまた言おう」と希望を持たせてあげることが大事です。=物事の概念・価値観を伝える」ことにはならないからです。

子どもの成長発達を促すには、お母さん方の言葉かけや行動、家庭でのコミュニケーションがいかに大事かということをご理解いただけましたでしょうか。子どもは“なまもの”と一緒で、幼少期から良い状態で保存してあげれば、いつまでもいい状態でいてくれるし、良くない扱いをしていれば、どんどん腐ってしまいます。そして後々後悔しても、もう元には戻れないのが子育てなのです。そのことを忘れずに、この時期だからこその家庭教育を大切にしてくださいね。

文:孫 奈美